【R18】脳直のやつ
「っあ、も、むりっ、て……」
もう何度目かわからないほど繰り返し限界を訴えた声は、既に潰れる一歩手前だ。訴える先がひたすら無理を強いてくる男なのか、耐え難い快楽を際限なく食い続ける自分の身体なのかもわからなくなってきた。どちらだったとしても必死の懇願が無視されている状況に変わりはないので、わからなくても別に問題はない。いやそこは問題ではないのだが別の問題の方はいよいよ深刻さを増している。奥の奥を容赦なく抉られてまた上り詰めた。
「ああああっ」
酷使し続けている喉から出る音は全部濁点が付いているようにさえ聞こえて少し可笑しい。声を抑える努力はとっくの昔に放棄していた。シーツにすがりついている指先の感覚が鈍っている。足りない酸素をどうにか取り込もうとする荒い呼吸音と、ついでに心臓の音もうるさい。いい加減寝かせてほしい。こうしている間にもどこにも力の入らない身体は勝手気ままに揺さぶられ続けている。
「ユ、しゅ」
制止の代わりに名を呼ぶ途中で開けた口の中に無作法な指を突っ込まれ、なけなしの理性が一瞬飛んだ。口内にみるみる血の味が広がる。強かに噛まれたはずの指が何事もなかったかのように舌を弄ぶ。色々信じられなくなって呆然としている内にもう一度いかされた。
「まだできるな?」
耳元で囁かれる一方的な要求を突っぱねる語彙も失われて、限界をとうに超えているというのに意識を失うことすらできない頑丈な自分を恨むしかなかった。
体中のありとあらゆる水分を吸ってしまっているシーツを替えてしまいたいのだが、指一本動かすのも億劫でぐずぐずと湿っぽいベッドに転がっている。
「……発情期か」
ぼそりと呟くと、存分に発散してスッキリした様子のユシュカが「なんだ不満そうだな。足りなかったか」と朗らかに応じる。そうじゃない。
特に何があったわけでもないのにたまにこういう夜がある。なにか理由でも付けてもらわないと納得いかないと思うが、発情期では冗談にもならない。溜め息をひとつついたところで、全く疲れを見せない腕が伸びてきて青ざめた。
「そろそろ休憩もいいだろう」
てっきり事後だと思っていた自分が悪いのか、いやそんなはずはと激しい混乱に見舞われていると、不意に頬を抓まれる。
「なんてな。冗談だ」
心底楽しそうににやにやしているのを見て、今すぐこの人の脳天に隕石か何かが直撃しますようになどという到底叶いそうにない個人的な祈りを神に捧げておいた。
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