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詰まったので息抜きの落書き

 いつかやるとは思っていたが。
 
 こちらが慌てて飛び起きる程度には派手な音だった。ベッドの端から転げ落ちた大魔王を、上から覗き込む。だからもう少し真ん中に寄れと常々言い聞かせていたのに、つまらない意地を張るから痛い目に遭うのだ。と、説教の文句まで考えてやったのに、当の本人は床の上で平和そうにむにゃむにゃしていて肩を落とす。こいつの頑丈さは俺を含めた三魔王の折り紙付きだった。完全に起こされ損だ。だからと言って放っておいて風邪でも引かせたら益々面倒なことになるのも重々承知している。
 むにゃむにゃのターンを終えて再び寝入ろうとする身体を一旦乗り越え、床に膝をつく。上半身を抱え起こして、ほら起きろ、ベッドに戻れと声をかけてみたが反応は芳しくない。大きめの溜息をひとつ吐くと、ようやくうっすらその目が開いた。暫しの沈黙の後、ユシュカ、と唇が動いてそのままそれが花がこぼれるような笑みに変わる。
「──っ」
 心臓を掴まれたような動揺に、言葉が出なかった。寝惚けているのか、飲み過ぎか。いや今日は飲ませてない、筈だ。つい数時間前の記憶すら満足に引き出せなくなるほどの己の狼狽ぶりには、さすがに苦笑を禁じ得ない。相当な重症だ。
 こちらが混乱している間に、大魔王は幸せそうな顔で夢の続きを追い始めている。仕方ない、と就寝時特有のほんの少し体温の上がった身体を抱き上げる。ベッドの真ん中に寝かしつけ、それから、先程の笑顔がこいつの本音であることを願いつつ、微かに綻びの残る唇に自分のそれを合わせた。

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